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設計・家づくりのはなし

林産地を訪ねて

木材の産地に行く機会がありました。
木を扱う仕事をしているのにもかかわらず、製材された木材は普段から目にして慣れ親しんでいるのに、樹皮がついた原木や立木だと、なんの木か分からないことがあります。
あたり前のように触れている木が、どのような場所で、どんな人たちによって、どのように育ち、やがて材木になるのかを純粋に知りたいと思い、見に行くことにしたのです。

 

 

日本には、昔からたくさんの木が生えていて、人々の生活に身近に存在していました。
決まったところで生活する農耕社会が早くから始まり、木を使った家ができたのです。
大陸から渡った建築技術も日本人によって独自のものへと進化し、長い年月をかけて高度に発展して行きました。その技術を支えたものは木の存在に他ならなかったと思います。
やがて、広葉樹が多く自生していた山にも、建築材として扱いやすい針葉樹である杉や桧がたくさん植えられていったのです。

 

 

日本は、歴史的に見ても、世界有数の森林国家ですが、国内で消費される木材の約8割を外国に依存しています。身近に木があるにもかかわらず、わざわざ外国から運んで使っているのです。
戦後、住宅不足を補うためにたくさんの木が植えられました。しかしその木が伐採期である50年以上も経っているのに、使われずに放置されている現状があります。
原木の価格が上がらないために木を切り出すコストを賄えない山は、木が充分育ったのにもかかわらず、使われなかったり、所有者によっては適切に管理すらされていないのです。
木は持続可能な再生産できる材料で、使っても植林することで枯渇する恐れがありません。
使われずに植えたままにしていると、循環するバランスが崩れ、様々なところに悪い影響を及ぼします。

 

 

循環サイクルのない発展途上国の安い原生林の木材を使い続けることは、地球全体の環境破壊にもつながります。
国産材使用を、セールスアピールの手段や、一時の社会の流れに乗ることなく、きちんとした考え方をもって取り組まなければならないと感じました。
国産材があまり使われない現状の問題点は、複雑かつ根深いものです。簡単に答えを出せるほど単純ではないようです。
今回訪ねた山で働いている人たちは、国産材を、安い外国材に対抗するために、丸太から柱になるまで一貫生産することや、乾燥技術などで付加価値をつけて取り組んでいる人たちでした。自分たちで問題解決を図っている人たちです。

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今後もいろいろな生産地を訪ねて、いろんな方のお話を聞きたいと思います。山の問題は長く時間のかかることです。私たちも自分の子供や孫たちにかかわることと考え、取り組まなければなりません。 大工は木があってはじめて仕事になるのです。木の問題に真摯に向かうことは自分たちの仕事の未来にかかわることです。そして、いつまでも美しい日本の原風景を守りことになるのですから。

 

 

(佐藤 正志)