第3話 ~ 木のはなし
「木」と、ひとくくりに言っても、実に様々な種類の木材があります。適材適所という言葉がありますが、元々は、用途に適した木材を用いることからきています。住まいで使われる木材を用途別に分類すると、主に構造材と造作材に分かれます。構造材とは、建物の骨組みに使われる木材のことで、土台や柱、梁、筋交いどがそうです。家の力を受け持つので、丈夫な木材でないと務まりません。一方、造作材は化粧材となって、目にふれるところの木材を言います。木目の美しさや、手触りの良さが求められます。床材は造作材の中でも直接肌に触れる機会が多い木材です。
住まいに使われる無垢の床材には杉や桧に代表される針葉樹と、楢や栗やケヤキなどの広葉樹に分けられます。針葉樹は「軟木」(なんぎ)と言われるように、軟らかくて加工しやすい反面、傷が付きやすいという特徴があります。
一方、広葉樹は「堅木」(かたぎ)と言われ、針葉樹に比べ硬く、加工しにくい面がありますが、傷が付きにくく、傷がついても目立ちにくいのが特徴です。
足が感じる堅さ軟らかさの感覚は、手のひらに比べあまり感じないと聞いたことがありますが、どうやら誤りのようです。見学会に参加された方の感想ですが、軟らかい杉材の床板と堅いチークの床材とでは明らかに杉材の床板の方が軟らかいと感じていただいています。堅さ軟らかさの違いは触れた時の体温の伝わり方も原因のひとつです。木はその構造から内部に無数の細胞壁を持っています。木が温かいと感じるのは発熱している訳でもなく、ふれたときの自分のぬくもりが奪われないからなのです。軽い針葉樹は広葉樹に比べ、気泡の数も多く、より温かく感じます。
日本には素足の文化があります。木が体に直接触れ合うことができるので、杉などの軟らかい木でも床材に利用できるのかもしれませんね。近頃一般的な、いわゆるフローリングは合板に接着剤を使ったものです。表面は呼吸できない塗膜でコーティングしてしまっていて、夏のじめじめした時など、足汗や湿気を吸ってくれることはありません。無垢床は製材された後でも呼吸して、余分な湿気を吐いたり吸ったりしてくれます。さわったり、寝転んだりすれば、さらにその良さが感じられるでしょう。
(佐藤 正志
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