さしがねの知恵

さしがねとは、大工さんの三種の神器ともいえる道具のひとつで、
L字型のシンプルなこの定規が、
実は知恵の塊なのです。

このコラム集は、そんな大工さんのさしがねにちなんで、
昔ながらの知恵や工夫を、今の暮らしに生かそうというコーナーです。

四季を感じることのできる暮らしや、
多少手間はかかるけれど
豊かな暮らしとは何か?というコラムや、
それ以外にもちょっとした住まいのお手入れ方法などもご紹介していきます。

第16話 ~ 木は腐りやすいのか?

手ざわり、足さわりの良さ、住まいの馴染みやすさから、私たちは屋外に使う材料にも木を使っています。

 

 

 

一般的に木をイメージするとどんなことが挙げられるでしょうか。

 

香りや手ざわり、目にも優しい風合いが良い面だとすると、軟らかく傷つき易く、腐るなどは、悪いイメージかもしれません。

お客様からもデッキやバルコニー、浴室の内装材に木を用いて腐らないのですかと心配されます。

 

もちろん、有機物からなる木材はやがて朽ちて土に還ります。

ですが、その特性や使い方を誤らなければ、何十年とメンテナンスしながら使い続けることができます。

 

では、木が腐るという事はどのようにおきるのでしょうか?

自然界は生き物が循環して成り立っています。

腐るという事は、この循環の中のひとつであり、役目を終えた物が分解される過程でおこります。

日常において木を腐らせる原因である腐朽菌はそこら中に漂っています。

腐朽菌は木を分解させますが、その為には、温度、空気(酸素)、水が必要になります。

逆に言うと、条件が1つでも揃わないと腐ること(分解)はおきません。

住まいにとって、材料である木、空気、温度(寒冷地でもなければ)、腐朽菌は外すことが出来ませんが、唯一水は外すことが出来ます。

 

どうしたら腐りにくくすることが出来るでしょうか。

屋外や浴室など水分がある環境でも、極力濡れにくくすることが大切ですが、濡れてしまっても直ぐ乾く環境を作ってあげる事が重要です。

濡れっぱなしになっていると、そこから菌が増えていきます。

 

例えば私たちは、ウッドデッキをつくる際に、床を支える土台や束柱が土からの水分を受けなくさせる為に、土間コンクリートを打設します。

また、木の断面は水分を吸収しやすいので、ゴムなどの水分を通さない素材を間に入れます。

デッキ床同士は、濡れても乾きやすくなる為に、板と板との間に隙間を設けます。

材料の素材選びも芯に近い赤身と言われる部分や耐久性の高い桧などの木材を用いています。

 

天然素材である木は、1本ずつの特性もあり、腐りにくい手段を講じても傷んでしまう所も出てきてしまいます。

そうした場合、一部が傷んでも全部取り替えるのではなく、傷んだら傷んだところの材のみ交換します。

そのためには、部分的な交換もしやすく作る事も大切ですね。

 

ご自身でこまめに木部保護塗料を塗って頂くのも有効です。

家族で手入れしながら使い続ける事で、愛着が沸きます。

 

住まいは出来た時が全てではなく、住みながら手を掛けて大切に住んで貰いたいと思います。

 

(佐藤 正志