建物レポート

イベント報告 | 鶴川の家・建物見学会

建築工事中だからこその、見学会になりました。
木の魅力は、表面の “もくめ” を見るだけではありませんね。
皆さまに触れて、持って、香って “木の魅力” を感じていただきました。

 

 

event_120428_after_1樹種の違う3つのムクの床材を3秒間ずつ、順番に手で触れていただいたところ、誰もがその「あたたかさが違う」 と答えられました。

とはいうものの実は、
「あたたかさの違い」ではなく、触れている手からの「熱=体温の奪われ方の違い」なのです。

 

 

 

 

 

 

熱を奪われるということが冷たく感じ、逆に熱を奪われにくいということがあたたかく感じたのです。
試しに、その3つの床材の表面温度をはかったら、同じ22℃でした。ちょっと不思議な感じさえします。

そしてその3つの同じ大きさのムク材を、持ってもらいました。

 

 

 

event_120428_after_2重さはそれぞれ、160gと290gと420g。およそ2.5倍の差がありました。

単純計算ではないのですが、先ほどの熱の奪われ方の違いは、物の密度・比重と関連しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

一般的にいうと、密度が高く重いものは、硬く熱を奪いやすい、逆に密度が低く軽いものは、やわらかく熱を奪いにくい といえます。

住まいの床材(の樹種)を選ぶ時の参考になりそうです・・・ね。

そして、3つの木の香りを、かいでもらいました。
多少の個人差はありましたけれど、(私たち人間にとっては)「いいにおい」 との感想でした。実はこの臭いが、木の耐久性を向上させる一因になっているのです。

 

「木が腐る」とは、腐朽菌の侵食なのですが、これらの繁殖を防ぐ成分がこの臭いの中に含まれています。比べると、臭いの強い木もありますが、臭いのしない木もあります。
木は、後に土に返ることが自然界の連鎖であると考えると、生物の多様性のひとつなのかもしれません。
逆に、腐りやすい部位に使う木は、「腐朽菌の嫌う成分を持った木を、しっかりとした施工方法で使用する」 ということが、大切と考えられます。

 

家の中でも、部位ごとに使う木の条件が、見えてきました。
不用意に化学的な防腐剤を考える前に知っておきたいことですね。

「1923年から88年間、地下20mの中で、旧丸ビルを支えてきた5400本もの松の木杭が、腐ることなく掘り上げられた」という資料も用意していたのですが、ご存知の方もいらっしゃいました。・・・ムクの木が持つ頼もしい話の1つでした。

木を薄くスライスして表面的に木として見える “もくめ” だけではなく、しっかりと厚みのある木の魅力を感じてもらいました。

(安間 稔)