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設計・家づくりのはなし

生まれ変わった大黒柱

家族構成が変われば、住まい方も変わります。
子供部屋が必要にならなくなったり、高齢に備えて、1階のスペースにキッチンやダイニング、リビングの他、寝室まで移動したりと間取りも大きく変わるものです。
大規模なリフォーム工事では、建物としての強度を保ちつつ、必要に応じて、柱や梁の構造躯体も間取りに合わせて入れたり、抜いたりします。

 

 

ちょうど、現在行っているリフォーム工事でも、まさに梁材で補強しつつ、柱を取り外したりしています。
取り外す柱の中には、和室の床の間に建っていた化粧柱があります。
この家の大黒柱として、住まいを支えていた柱です。
間取りの制約から取り外すことになりましたが、檜のとてもきれいな柱です。
今でも、ツルツルとあぶらを含んで光っています。
近頃は、工場で作られた集成柱に表面だけ檜の単板を貼ったものがほとんどですが、この柱はおよそ樹齢100年くらいの無垢の柱です。
あちこち、長押や鴨居を取り付けた時にできた欠き込みがありますが、一気に切り倒してしまうには、あまりにもったいないです。
家が新しく生まれ変わっても、さらにこの家を見守ってくれるように、ちがう所で活躍してもらうことを考えています。

 

 

リサイクルできる素材はたくさんあります。
例えば、鉄や銅、アルミなどの金属は溶かして再び違うものへと生まれ変わります。
形を変えてリサイクルされますが、木はそのような使い方では、紙の原料か、合板の一種の原料にしかなりません。
しかし、価値ある無垢の木は、刻み直し、削り直してあげることで、他の場所で生まれ変わり、新築当時の輝きを取り戻すことができます。
金属の様に長さを途中で足したりすることはできませんが、ひとカンナかけてあげるだけで新品に戻すことができます。

 

 

木は育った歳月分、切り倒されて木材として生まれ変わっても同じ歳月だけ材料として使うことができると言います。この大黒柱も用途を変え、これからも末永くこの家とともにあるでしょう。

(佐藤 正志)