スタッフブログ

設計・家づくりのはなし

未来への贈り物

住まいを建てるのは一生に何度とない大きな買い物です。
おのずとそこに住む家族にとっても思い入れも大きな事になります。
住まいを建てることですら、大掛かりなことですから、昔の人が寺院やお城を築くときは、たくさんの人々の気持ちが詰まったものだったのでしょう。
そんな寺院やお城を建てるときに、屋根裏に奉納した木札(棟札とか、棟板と言います)があります。
その建物がいつ、誰が、何の為に建てたのかを記したものでした。
残念ながら、住まいを建てるときにはそのような風習はありませんでした。

 

 

今から8年前にお世話になった設計事務所さんから、そんな風習を教えて頂き、住まいを建てるときに木の札を用意することになりました。
本来は神事を行うときに唱える祝詞のような文言を記しているようですが、書かれた意味が簡単には分かりません。
最初からない風習ならば、住まいを建てたことが記念に残る様な言葉を考えて、書き留めるようにしました。

 

 

お客様の名前をはじめ、棟上げをした日、家を建てる大工棟梁、大工、設計士、現場監督の名前を記し、そのときの物価が分かるように、お米やお塩の値段、ガソリンの価格、電車の初乗り運賃なども書いています。
また、消費税が上がったとか、オリンピックが開催されたとか、そのときの世相も書き入れています。長さ80㎝くらいの大きなお札の裏は何も書いていません。
上棟式のときにお客様に渡し、屋根裏に奉納するまでの暫くの間、今の住まいに持って帰って頂きます。
裏側には、家族みんなで寄せ書きのように使って頂いているのです。

 

 

家を建てたときの思いが詰まったお札は、50年60年と家を守ってくれるでしょう。
棟札は天井裏に納めたら、目に触れる機会はなくなります。
奉納したご自身が取り出す事はきっと無いかも知れませんが、大きなリフォーム工事や家を建替える際にあらわれ、当時その住まいがどんな思いで、どんな人によって建てられたが分かるでしょう。
それは、タイムカプセルのような未来への贈り物です。
思いを未来へ残せることは、ちょっと気恥ずかしいことかも知れませんが、素敵なことですね。

(佐藤 正志)