建物レポート
王禅寺西の家Ⅱ
小さく整えながら、心地よい広がりを感じられる住まい。
敷地の形状や周辺環境を読み解き、あえて建物をわずかに斜めに配置することで、庭の奥行きや隣家との距離が生まれ、小さな敷地の中に視線と光が伸びていく余白をつくりました。
広さとは面積だけでなく、光や距離の取り方で感じ方が変わっていきます。
家の中にいる時も、ふと外の気配を感じたり、光の変化に気づいたりする瞬間があります。
この住まいは、どこにいても心地よく過ごせるように、小さな工夫をあちこちに忍ばせています。
斜めに配置したことで室内に入る光は一日を通して表情を変え、時間の流れを静かに感じることができます。
お昼前、窓から差し込む光が窓際をやわらかく照らし、午後になると日差しは少し角度を変え、ダイニングの奥まで光を運びます。
自然とテーブルのまわりに家族が集まり、会話もゆっくりほどけていきます。
自然光が落ち着いたころ、間接照明が空間をそっと支え、夜の表情をつくります。
キッチンに立つとダイニング、リビング、そして庭にまで視線が抜けていき、小さな家でありながらも、家族の動きと時間がひとつながりになる広がりを感じます。
裏動線を設けることで、リビング・ダイニングとのメリハリが生まれ、限られた面積でもすっきり整い、動きやすい計画に。
さらに収納をひとまとめにし、食事や家事の動きに合わせて「とりあえず置ける」「すぐ片付く」が叶う小さな余白を設けました。
水回りは必要十分なコンパクトなつくりに。
コンパクトでも、窓・お気に入りのタイル・収納の配置などによって使いやすく心地の良い場所に。
動きが静まると、無垢の床、造作家具、障子、照明の影がゆっくりと表情を立ち上げます。

浴室は木の壁に囲まれ、小さな窓辺には緑が馴染み、一日の疲れをそっと癒してくれます。
植物の影が障子に揺れるとき、人工の光でありながらもどこか自然の気配を感じさせてくれます。
庭へ続くデッキのぬくもり、玄関の飾り棚に落ちる光、必要な場所だけをそっと照らす照明。
光の届く場所には自然と人が集まり、そこがひとつの居場所になります。
住まいは一度きりの完成ではありません。
季節や時間、家族の成長とともにゆっくりと表情を深めていきます。
小さく整えて、広くのびていく暮らし。
そんな暮らしを支える住まいが完成しました。































