さしがねの知恵

さしがねとは、大工さんの三種の神器ともいえる道具のひとつで、
L字型のシンプルなこの定規が、
実は知恵の塊なのです。

このコラム集は、そんな大工さんのさしがねにちなんで、
昔ながらの知恵や工夫を、今の暮らしに生かそうというコーナーです。

四季を感じることのできる暮らしや、
多少手間はかかるけれど
豊かな暮らしとは何か?というコラムや、
それ以外にもちょっとした住まいのお手入れ方法などもご紹介していきます。

第8話 ~ 少しずつ・・を楽しもう。

何かと忙しい世の中、時短生活などと言われ、家事はさっさといっぺんに済ませたい。私も日々そんな気持ちになることが多いですが、今日は、そんな時代に逆行したおはなしです。

 

「ガンコな汚れも一度に落ちる!」放っておいた頑固な汚れは楽に落とせたほうが便利ですよね!

 

そんな便利な化学洗剤がなかった頃、昔の人は米ぬかで木の床をせっせと磨いていました。

米ぬかは、ご存知の通り、精米するときに取り除く玄米の表面の部分で油分を多く含んでいます。

油を直接塗りこむほど、べとべとしていませんが、まめに摺りこむことで少しずつ少しずつ油分が染み込んでいきます。

また米ぬかには石鹸に似た成分のたんぱく質を含んでいるので、汚れも少しずつ落としてくれます。

一気に汚れが落ちたり、ワックスがかかったりするわけではありませんが、この少しずつの蓄積が他では出せない黒光りしたよい風合いを出してくれます。

 

とかく天然成分のものは、化学的なものよりも、即効性に劣ることが多いのかもしれません。でもじっくりと少しずつ・・、によって得られるよさを見直してみてはいかがでしょうか?

 

 

 

※写真は、引渡し直後と3年後の無垢床です。米ぬかは使っていませんが、やさしく変化していきます。

(関 文子