さしがねの知恵

さしがねとは、大工さんの三種の神器ともいえる道具のひとつで、
L字型のシンプルなこの定規が、
実は知恵の塊なのです。

このコラム集は、そんな大工さんのさしがねにちなんで、
昔ながらの知恵や工夫を、今の暮らしに生かそうというコーナーです。

四季を感じることのできる暮らしや、
多少手間はかかるけれど
豊かな暮らしとは何か?というコラムや、
それ以外にもちょっとした住まいのお手入れ方法などもご紹介していきます。

第9話 ~ 『までいの力』という本。

暮し方を見つめなおそう という事に着目した村が刊行した本の話です。

 

「真手(まて)」という古語が語源で、左右揃った手、両手の意味。

それが転じて、手間ひま惜しまず丁寧に心をこめて つつましくという意味。

 

戦後の発展を支えてきた側面でもある、大量生産・大量消費・大量廃棄。

今まで効率優先で押し進めてきた中で、そのスピードに掻き消されて何か見失っているものがあるのではないか。

家族の繋がりや仲間・地域の助け合いなどが薄れたり切れたりした。

 

「スローライフなんてことばがあるが、それって、『までい』ってごとなんじゃねーべか?」と、高齢のある1人の村民が言ったそうです。

 

この『までい』とは、

「までい に飯を食わねえどバチあだっと」

「玄関は までい に掃いておけよ」

「食べ物は までい にな」

「こどもは までい に育てろよ」・・・、と使うそうです。

 

ところが、この言葉を合言葉にした 『までいの力』 という本の刊行直前に、あの震災が起きた。

そして、その村のHPを見ると、震災後15ヶ月経った先月でさえ約98%の方々が、村外避難を余儀なくされているとの事。

 

その村の名前は、福島県飯舘村。

この村には、忘れられた日本の美しい高原の風景と、“までい” という 方言 が残っている。

奇しくもこんな形で、この 『までいの力』 を知ることになった私。

もしかして、この話を知ることにならなかったほうが良かったのか・・。

 

この本の事、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、私たちは、『ひと手間惜しまず』を実行していきます。

 

 

※2013年8月に書いた記事を再掲載しています。

(安間 稔